Q,泣いたときのことを覚えていますか?
A,一度だけ、覚えています。

一番真新しい記憶はいったいいつのものか、
泣いたことのない自分にとって、
それはとても答えがたい質問だった。

でも・・・

一度だけ、たった一度だけ覚えているものがある。
『残念ですが、君の足は、もう――――』


親の死で泣いたことのない自分。
恐怖で泣いたことのない自分。
試合で負けても泣いたことがなかった自分。

眼を瞑れば、今でも思い出せるあのときの情景。
白い白衣を着た年の過ぎたその医者は、どこか事務的な言葉を吐き捨てた。


『――――そんな・・・』


ああ、姉が泣いていた。
どうして自分でなく、姉が泣かなければならないのか、と・・・
どこか他人事のように感じる冷たい自分の心。


『どうにか、・・・・・・どうにかならないんですか!!??この子は、サッカーが好きで!!!』
泣かないでいいよ、お姉ちゃん。
泣かないで、お姉ちゃん。

どうして貴方が泣いてるの?どうして私が泣かないの? どうして??
ワタシハシズカニメヲトジタ 振り続けるのは赤い雨
ハレワタルソラニアメガフル 一粒の小さな小さな雨粒
クライクライバショノソコヘ 私は静かに堕ちて逝く

私 を 縛 る 鎖 は 、

ど う し て

外 れ て く れ な い の だ ろ う

 

(08.10.05)