「!!!」
名前を呼ばれ、は眼をあけた。目の前にはあまり評判のよろしくない新任の教師。熱血なのは結構だがどうも方向がずれてる。今回ばかりは寝ていたが悪いんだけど・・・。
心配そうな顔をして、前の席の笠井竹巳が後ろを振り返っている。口は小さく、『寝てたのか?』と問う。それには隠すことなく肯いた。呆れた竹巳の溜息が聞こえるようだ。ごめんと態度で示すと竹巳が小さく笑った。
「、何をしていた。」
「寝ていました。」
ニヤニヤと厭らしい顔つきでの罪を問おうとしたその教師が、の言葉に詰まる。まさかこんな正直に答えが返ってくると思ってなかったのか。どっちにしろ、この教師は知らない。この中等部で彼女がどれだけ有名なのかを。
「黒板の問題をやれ。」
「はい。」
後ろからくすくすと小さく笑う声が聞こえる。おそらく教師に対してか。その中にはの友人も混じっていることだろう。とは再度溜息を着きつつ黒板の前へ歩み寄る。書かれた問題はごく一般的な数学の三角形証明問題。余すことなく全国の中学生が嫌う問題。と友人の藤代誠二は言っていた。いつ調べたんだか。(だって俺が嫌いだしby誠二)お前の意見など聞いていない。
ともかく寝起きで機嫌の悪いに問題をとかせたのが悪かった。彼女の寝起きの悪さを知っているのは竹巳と誠二など近しい者たちだけであるが、ここまで不機嫌オーラを振りまかれたら誰だって気がつくというもの。寝起き云々ではなく、機嫌どうのがだ。
右手の指で挟んだチョークを同じペースで動かす。書き上げられていく文字はどれもクラスメイトが見たことの無い文字。教師すらもないんじゃないだろうか?
「終わりましたけど。」
「、英語の時間じゃないんだが?」
「あ、すみませんドイツ語で書いちゃいました。でも先生、前ドイツに住んでたっていってませんでしたっけ?」
「っ・・・・・・」
「ドイツに住んでたなら分かりますよね?日本語でどう書けばいいのか分からないので、先生説明していただけますか?」
『嘘付け』との席あたりから小さな言葉が聞こえるが、それを軽く無視してはにっこりと笑った。さぁ、答えてみせろ。といわんばかりに。黒板に書かれた文字は紛れもなくドイツ語。日本語を堪能に喋れるがかけないわけがないのに、それにすら気がつかないらしい。
「き、今日は、ここまで・・・」
チャイムに助けれらたその教師は一目散に逃げていった。よほど精神的ショックを受けたか。それもそうだ。自分はドイツに住んでいたなんて大ぼら吹いておいて実は喋れもしないと分かったらかなり恥ずかしい。廊下の端で何かが転げまわる音が聞こえる。おそらく手に持っていたものを落としたか。
「アハハハ、ナイス!!!」
席に戻ると誠二が大爆笑で近寄ってきた。
「誠二、肩をたたかないで。」
「あの先生、あんま好きじゃなかったんだよねー。あー、すっきりした。」
誠二は分かっていない。この証明問題が、中間の基礎になっていることを。こいつまた赤点か、と思ったに前の席で道具を閉まっていた竹巳が振り返り、そうだね、と分かったような表情で言ってきた。
「竹巳、頼むから読まないで。」
「読んでないって。」
嘘付け。いや、もう良いや。とも道具を机の中に閉まった。
「さすがさん、すっきりしたよぉ」
教室の端でクラスの女子が喋っているが、こいつらも分かってないんだろうな、とは思う。竹巳が何か言いたそうにしているが。
「なに?」
「のノート見せて。」
「なんで?」
「テストの基礎なのにあのままノートとるわけにはいかないだろ。」
「ああ、そうだね。」
つまり理解するから貸してと言っているんだ。しまいかけたノートを竹巳に渡す。ありがと、といって竹巳はそのノートを机の中にしまった。帰ってくるのは恐らく明日か。
「で、何してるんですか?渋沢さん?」
「え、・・・キャプテン?」
授業終了3分と21秒、3年の教室からここにくるまでおよそ5分。・・・・・・サボりか?
「に会いに着たに決まっているだろ。」
「三上さんが来る前に帰ってください。」
「何、あと4分46秒しないとこれないさ。」
達は思った。こいつは三上に何をした。と・・・。
「で、サッカー部キャプテンともあろう人が、授業サボってまで何しに?」
「「(サボり確定?)」」
「決まってるだろ、サッカー部への勧誘だ。」
「「(否定しないし)」」
竹巳と誠二はひどく思った。どうしてこの人が自分達サッカー部のキャプテンなんてやってるんだろう。と・・・こんな変態。
「嫌です。」
「相変わらず容赦ないな。」
「どうして私が他人の世話なんてしなきゃいけないんです?(ふざけたこと抜かすな変態)」
「が一番適していると思ったからなんだがな。(その変態を好きなは誰だ?☆)」
「呼びかければやりたい人たちなんて腐るほどいるのでは?(ここから3,462キロ離れた森の中のジョニー[カメレオンオス2歳]君?)」
「、ジョニー君って誰?」
「間宮の飼ってるジェニファーのお兄さん。」
「なんでそんなこと知ってるのさ。」
「間宮から聞いた。」
二重会話をしていたとキャプテンの間に難なく滑り込んだ竹巳が一番怖い、と誠二はひそかに震えた。
「何度も言いますけど私はマネージャーはやりません。」
「どうして?」
「、やってよ。」
「・・・・・・誰がガキ共の世話なんてやるか・・・」
「「「(本音が漏れたな・・・)」」」
「それより誠二、次の課題終わった?」
「え、次って・・・・・・」
「「英語」」
誠二の動きがぴたりと固まる。いつもどおりの反応に、も竹巳も溜息をつくしかなかった。少しは学習しろといってもこいつのことだ聞きはしないだろうな、と思いながら。
「竹巳!!!!ノート見せて!!!」
「「いやだ」」
「即答!!??」
「どうして私が見せなきゃならないのかな。」
「自業自得だろ、誠二。がんばれ?」
「居残りなんてしてみろ、レギュラーからはずすぞ?」
「オーボーダー!!!!!」
「横暴くらい漢字変換しろよ。」
「そー言うわけなんで渋沢さん。今凄く忙しいから帰れ。」
「仕方ないな。藤代のせいで今日は大人しく帰るか。」
「(え、俺??)」
きっと戻ったら三上あたりに八つ当たりしているだろう、渋沢克朗中学3年。あんな顔でも生徒の一人。
(08.10.26)