嵐は突然やってくるもの、と相場は決まってる。
嵐を巻き起こす子猫
「三上亮!!」
『は?』
10月某日、新体制の整いつつある武蔵森サッカー部内に嵐が巻き起こることをまだ彼等は知らない。
全てはレギュラーの一人の名前が叫ばれたことから始まる。
サッカー部一軍といえばその名を全国に知らしめるほどの実力者。
加えてその容姿から他校にもファン多しと言われる彼等。
名前を呼ばれたのはそんな彼等の中でもっとも有名な4人のうちの一人だった。
今日は監督・コーチと共に3年部員が高等部へと行っていたため(なんとも都合が良いことに)
新キャプテン渋沢の指揮の下、ミニゲームが組まれていた。
そんな時聞こえた声に、一同(選手だけでなくファンの女子生徒達も)の時間が止まる。
呆けたような声は1,2年レギュラーの声だ。
「死ねーー!!!」
いきなりそれはないだろ。的な台詞に一同騒然、そして間を置かずして飛んできたのは、
見慣れたって言うかもう「身体の一部だぜ☆」な台詞を言っちゃう犬までいるほど慣れ親しんだ、
白と黒のサッカーボール。
(注意※ボールは人を殺すためにあるのではありません)
「うぉわ!!!!」
三上亮、2年。ボールが飛んできた真っ青な晴れの日。
恨まれるようなことは、・・・してるけどボールぶつけてくるような奴にした覚えはないと思う!!!
(それもどうかと思うよ亮君)(そして否定しきれないところヘタレ街道まっしぐらな彼)
顔面目掛けて飛んできたボールを避ける三上。(チッ)(舌打ち!!??by三上)
ボールは転々と少し離れたところを転がって、一緒にフリーズしている渋沢を抜けてゴールへ・・・。
「誰だ!!」
「亮の馬鹿野郎!!!!」
三上は全力で犯人を捜す。それはもう報復するつもりMAXだ。
普段の彼を知っている方々には分かるとおり、三上亮、性格・俺様。
気に入らないことは殴り捨てろがモットーの彼。(んなわけないだろ!!by三上)
そして思うことはただ一つ。誰だそんな勇気ある奴は。皆(選手のみ)興味深々で探す。
が、三上は聞こえてきた声に、犯人を見つけ、・・・・・・固まった。
顔が良い彼も流石にびっくり☆呆けた顔も中々男前。
そしてそれを写メるファンの方々。売れば儲かりそうだな、おい。
話を戻して、ボールを蹴った犯人の姿を見てフリーズした三上亮。
その視線の先を追うと(レギュラーの彼らがね)そこには、
白い帽子に白のパーカー・ジーンズのこれまた顔の良い(帽子でよくは見えないけど)少年。
年の頃、ざっと12,3歳。しかも美少年。
女子の彼らは思う、「ランドセルと短パン履かせたいvvv」と・・・
あんた等変態か・・・。
流石にランドセルも短パンも履いてないその少年は、ちょっときつめに三上を睨んでいるのが見て取れる。
それすらも可愛いvvと思うお姉さま方。あんた等どうかと思うよ・・・。
「・・・・?」
漸くわれに返った三上が呟く言葉、いや名前か?
その声が聞こえたかどうかは知らないけど、ウェストポーチを腰につけたままのその少年は
ずかずかと勝手知ったる俺様の場所てな具合に堂々とコート内に入ってきた。
てかどっかで見たことあるぞこの性格。
普段関係者以外立ち入り禁止。
いや今も立ち入り禁止だけどさ、注意するはずの渋沢は唖然としてる、よって無理。
なもんで少年は堂々と三上の前に、そして・・・
ドガッ
鳩尾一発。
流石に痛いよ、少年。
ヘタレが更にヘタレたじゃないか!!!
「人との約束すっぽかしやがって!!!この嘘吐きの垂れ目のヘタレ野郎!!!来れなくなったんならなったで連絡しやがれってんだ!!!!!」
あらん限りの罵声と共に、もう一発、今度は脳天直撃ですか!!??
それはともかく、悶える三上、いやぁ、見たこと無い姿に写メるお姉さま方。
・・・あんたら実はなんでも良いんだろ??
「三上くーん!!!」「大丈夫〜!!!」とかなんとか我先に生き返った彼女達は叫ぶが、
それでも写メするのは止めないお姉さま方。
だから何がしたいんだよ。何よりも少年の台詞は無視ですか?
「ち・・・、・・・ちょっ、!!お前なんでここにいんだよ!!!」
とりあえず復活を果たした三上亮。それでも鳩尾を痛そうに抱える。
「そんなことどうだって良いだろ!!!人が態々来てやったんだから!!!どうせ今日のこと忘れてたんだろ!!!そうだろ!!!亮の馬鹿!!!!」
俺様万歳ですか??
「だーーー!!!悪かった!!悪かったって!!謝るからとりあえずボール蹴ってくんのは止めろ!!!」
少年は切れると手よりも足が出るらしい。
片っ端から傍にあったボールを三上目掛けて蹴りこむ。
それを避ける三上の姿、なんでそんな避け慣れてんですか?
いやいやいや、それはともかく、お姉さま方写メしてる場合ではないでしょ。
どうやらこの少年、三上となにやら関係ありですよ。気付いていますか?
そして渋沢さん、止めようよあなたキャプテンでしょうに。何でそんなほくそ笑んで・・・・・・え?
・・・・・・・・・・・・・・見間違いですね。そうですね。そうだよね!!??
「いっぺん死んでそのヘタレ具合直してこいや!!!」
「ぎゃあああああ!!!」
(警告※サッカーボールは人を殺す道具ではありません。)
「・・・三上先輩が・・・」
「凄いことなってるな。」
「あの子誰ですか?」
「ミカチャンの知り合いっぽね。」
「年は俺と同じくらいっすかね?」
「あータブン。すげぇ、サッカーやってんのかな。」
「で、あの子は誰ですか?」
レギュラー諸君、どうか止めてあげようよ。
そして最後の台詞の君、そう、君だよ猫目君。
頼むからどうしてそんなに嬉しそうなのか説明プリーズ。
漸く落ち着きを取り戻したサッカー部内、三上は肩で息してその場に膝をついている。
少年はどこか爽やかだ。きっと大分満足したんだろう。
「君は誰だ?」
「あ、ご挨拶遅れました。ヘタレ馬鹿兄がいつもお世話になってます。三上と言います。どうぞ宜しく。」
「「「「・・・・・・兄??」」」」
少年こと三上はにっこりと帽子を被りながらではあるが笑った。
その笑顔を見たレギュラー諸君は思った。
「似てない」と・・・。兄が『邪気』なら弟は『無邪気』、そんな感じである。
ころころとなんだか小動物のような雰囲気を持つ少年が笑う。
「へー、三上先輩って兄弟居たんだ〜。絶対一人っ子かと思ったのに。年いくつ?」
藤代がに近づき、「俺藤代誠二。宜しく。」と挨拶する。
「12。えっと日本だと中一?」
「日本だとってことは今まで外国にいたの?」
「そう。亮が武蔵森に入る時丁度父の仕事の関係でアメリカに。で、2年ほど期間があったんだけど早めに終わったんで帰ってきたんです。」
「ね。」とが三上に声を掛ければ三上は「おう」と気の無い返事だけで応えた。
これが日常茶飯事らしくは気にしないらしい。
「じゃあ、君はどこの中学校通うの??」
「え、ここ。」
「ちょ、待て!!聞いてねぇぞ!!」
「今日空港で言おうとしたけど来なかったじゃん。」
「う・・・」
聞けば今日、帰国すると事前に連絡したものの、
成田に到着してみればあら不思議見慣れた姿は何処にも無く、10分と待たずにこっちに来たと。
曰く「なんで待ってなきゃなんないのさ」と・・・。
なんだろう、兄弟は兄弟。俺様の弟も俺様だった。
こんな無邪気な子でも、俺様だった。
「国際電話もそっちからは掛けてこないし、まぁこっちも引越しなんだで忙しくて連絡したの昨日だしね。だからって一日で今日のこと忘れるのどうかと思う。」
「それは悪かった。だけどな、夜中の4時に電話してきて『明日帰るから』って言われたってな。時差があるだろ!!!時差が!!明日だと思ってたんだよ!!」
「それぐらい考えてよー。あ、いつ家に帰って来れる?とりあえず家は変わってないけど、でもパパ会いたいっしょ?」
なんだろう、君『パパ』発言に違和感が無いのは。
三上が言えば違和感ありまくりなのに。(悪かったな。by三上)
「親父?別に・・・には会えたし。」
「会いたくないの・・・?」
「分かった週末に帰るから。」
「やったvv」
ちゃっかりとしたブラコン発言もなんのその。
小首をかしげて寂しそうに「帰ってこないの?」と聞かれたら、
いかに俺様三上と言えど、帰らざるを得ないと言うか。
ぶっちゃけ喜んで帰ります状態だ。
「三上が押されてる。」
「実はブラコンか」
「似合わな・・・」
「かーさーい??」
意外と地獄耳の三上さん。
ちょっとした罵声も聞き漏らさない。
思わず「げ、」と笠井が後ずさる。
その様子を見て、は「お」と何故か嬉しそうな声を上げた。その言葉にを見る彼等。
「カサイ?・・・・・・猫目君、笠井って言うの?」
「猫目って・・・・・・あ、笠井竹巳です。」
は何故か兄である三上ではなく笠井に近づいてじっとその顔を見る。
そして呟かれた言葉は、彼の特徴的とも言える目。
猫目と言われて別にコンプレックスを持ってるわけではないが不服感いなめない。
だがそれでもとりあえず自己紹介する笠井君。
礼儀正しいのはきっとご両親の教育の賜物か。(そんなことどうだって良いだろby笠井)
「・・・・・・可愛い・・・」
「え・・・」
が再度呟いた言葉に笠井は目を丸くする。
男からしたらあまり言われたくないし男相手に言われてもそれこそ嬉しくない言葉だが、
のあまりの嬉しそうな顔に何もいえない笠井。
頬を紅潮させ、迫ってくるを笠井は(余計なモノローグを入れるんじゃない。By笠井)
はい、すいません。嘘です。紅潮させてません。
「亮、猫目の笠井君、可愛いね。」
「お前な・・・相変わらず猫好きか。」
「CATは一生の恋人だよ。」
「ハイハイ、」
「投げやり嫌いなんですけどー。」
君、かなりの猫好きと見えた。だからか、笠井君の猫目が好きなんだろう。
「さて、帰ろっかなぁ。パパ一人で片付けてるだろうし。」
「もうかよ、親父にやらせときゃ良いじゃん。」
「良くない良くない。これからチャリで近所のスーパー探して買い物だよ。重労働だよ。アキ兄がいないから。」
「ごめんなさい。」
ヘタレの弟は腹黒でした。皆さん覚えておきましょう。
ヘタレは遺伝しないんです。寧ろ腹黒は遺伝するんです。テストに出るよ!!(出ねぇよ!!by三上)
「『アキ兄』?可愛い・・・」
「『アキ』って女子みたいっすね。」
「お〜ま〜え〜ら〜?」
「「げ・・・」」
微妙なところで兄弟ソックリ。近藤と藤代がどうなったかはご想像にお任せします。
きっと自ら寮の風呂掃除を買って出るぐらい酷かったんですよ。(言ってる言ってる)
「それじゃあね、アキ兄、猫目の笠井君、犬君。その他の皆さん。」
三上、名前を覚える気はさらっさらありません。
そもそも名前を教えてすら貰ってない内に帰ろうとしてます。(注意※犬君=藤代)
唯一覚えたのは猫目の笠井だけらしい。(藤代は論外。)良いのかそれで君・・・。
「じゃあまた明日。」
『は???』
「どーいう意味だ?」
「実はもう編入手続きしてるんだよね。明日からここに通うから。制服もあるし。あ、自宅通学だけど。パパ一人にできないからね。」
「聞いてねぇ!!!」
「いなかったのは亮だよー。んじゃね。」
嵐は突然やってくる。そして突然去って行く。
・・・・・・・・・台風一過ですむんですか?
「が通うのか・・・」
「凄いな、お前の弟。」
「・・・・・・(弟に間違われてないか、?)」
「どうした、三上。」
「・・・(説明面倒だし、余計なのくっ付かれるのはむかつくから)なんでもねぇ。」
どこまで行ってもブラコン三上。・・・いや訂正、シスコン三上。
「ただいまパパ〜。」
「おかえり、。亮には会ってきたか?」
「会って来たよ。元気だったよ。相変わらずヘタレてた。」
「流石我が息子。」
パパさんそこは誇るところじゃございません。
は家に付くと被っていた帽子を脱ぐ。
そこから現れたのは、明らかに男とは違う容姿のの姿。
ここで訂正。三上、性別=女。そう、は妹だ。
「ただいま〜、要(かなめ)〜、おお今日も可愛いぞ、潤(うる)。」
「ホント、猫好きだな、は。」
「可愛いじゃん。」
「確かに可愛い。」
「あ、そういえば、亮の後輩君に猫目君が居た。可愛かったなぁ。」
「後輩君・・・?男か?」
「うん、男。あ、どうやら私男に見られてたっぽい。」
「やっぱりか。あの格好じゃそうだよなぁ。お前亮そっくりのようでパパ似だもんなぁ」
「パパの顔は美人さんだよねぇ。似てる?」
「も美人さんだぞー。似てる似てる。あいかわらず亮はシスコンだったか?」
「さぁ?でも亮は亮だった。変わってなかったよ。」
「明日楽しみだな。」
「楽しみだね。」
が弟に間違われたのは絶対パパさんのせいだと思う。
ちなみに補足でパパさんの容姿を伝えるなら、
切れ長の目に右目下の黒子、和風天然系の美青年。・・・・・・美青年。
若作りいらずの30歳。
街を歩いたら家族三人兄弟に見られたことは記憶に新しい。
童顔と言ってはいけない。単に老けないだけなんです。
永遠の20歳(の顔)のパパさん。
そんなパパさんの趣味は「娘を使って息子を虐めること」です。
親ばかに変わりないのに、三上さんこの扱い。
そんなパパさんに育てられた娘は当然、楽しいこと大好きに決まってる。
とりあえず台風一家(一過に非ず)上陸です。
「お父さん30歳って若すぎない?」
「若いねぇ」
「・・・?」
「秘密ですよ、秘密☆」
(08.09.06)