嵐は突然やってくるもの、と相場は決まってる。

 

ハロー、ハロー、皆の衆

 

 

昼、笠井は用事があって職員室へと歩いていく。
こう言う時、男女別棟っていうのは面倒だよな。ね、笠井君。そんな顔してるよ君。

武蔵森は一応共学。共学だけど同じ教室で勉強することはない。
男子は男子、女子は女子。唯一交流できるのは本棟での特別教室を使う時か委員会か。
女子棟と男子棟の中間にある本棟。中間って言うか二つの棟を繋ぐように置かれてる。
男子が女子に、女子が男子に行かないよう、ど真ん中に共同職員室。
本棟の特別教室を使うさいでも職員室を通ってかなきゃならないって言う面倒さ。
当然、笠井の使う教室から遠い。


今時こんな学校も珍しいよね、本当に。
まぁ、男子の人気が凄い(ごく一部)のは知ってるから、文句は言わないけどね。



ちょっとだけ男子サッカー部専用グラウンドについて話そうか?
まずあそこ基本的には立ち入り禁止。関係者以外ね。でも大抵女子が見学に来る。
ちょっと前までは完璧に見学禁止だったんだけど2年ほど前からいきなり許可された。

理由?校長に聞いたら、「女子の集団は恐ろしい」って帰ってきた・・・何があったんですか?校長!!!



それはともかく、それからだ。
警備員と言うか事務員と言うかがサッカー部コート入り口で見学者の受付をする。毎日人数限定で。
勿論身元確認はするらしい。面倒だけど。仕方ないよ事務員、それで給料貰ってんだから。
サボったらあんたの首がマジで飛ぶよ?

さてさてここで疑問、何故昨日はあんなにも簡単に入ってこれたんでしょう。
答え、脅し・・・・・・じゃなくて、三上の妹として入れてもらいました。
最初は疑われたらしい。だけど、帽子脱いで、空港直行だったため持っていたパスポートを見せて入れてもらったそうだ。

ちゃん、脅したら駄目だよ。



さて話を戻そうか、そう今は笠井君が職員室に向かっていたところ。
何の用かって?ぶっちゃけパシリだよ。日直って遠まわしじゃなくてもパシリだよね。雑用。
今現在彼が考えていることはただ一つ。
昨日サッカー部に乱入してきた三上の弟(と思ってるけど本当は妹)のこと。
自分のことを『猫目の笠井君』と呼んだ彼(彼女)。にっこりと笑って可愛いと言う彼(彼女)。
どうにも頭から抜けない。笠井君、それって・・・こ(ギロリby笠井)




・・・・・・どうも人間として気になるらしい。

何よりも謎なのは今日転入してくると本人は言ったのに、
今のところ誰かが転入してきた噂を聞かないということ
(そりゃそうだ。男子棟には転入しないんだから)を笠井は藤代から聞いたらしい。




「悪かったな、笠井。」
「いえ。それじゃあ俺はこれで。」
「おー。」


そんなことを考えながら雑用完了。くるりと後ろを向いて、

ガンッ

目の前に同じ背丈ほどの生徒の姿。考え事して気付かなかった笠井君、君の失態ですよ。
お互い蹲る。丁度頭をぶつけたらしい。ぶつかった生徒は頭をさすりながら涙目。


「っっっったぁぁぁぁ・・・」
「お前等なにやってんだ〜?」
「う、う・・・前方不注意しちゃいました。」
「いった・・・・・・あ、大丈夫ですか?」
姿を見れば、それは女子の制服。女子だから顔はしらないけど綺麗な顔の生徒。
そのこが涙目で立ち上がる。笠井は既に立ち上がる。(若干ぶつけたところを抑えてていたけど)

「あー、平気平気。ごめんね、前方不注意でした、・・・って、あれ?」
「こっちこそ。えっと、どうかしました?」

年のころは笠井と同じ。少し大人っぽいけど多分同じ。
その女子が笠井の顔をみてにこっと笑う。平気だ片手を振りながら。

「なんでもない。じゃあ用事あるから、またね。『猫目の笠井君』。」
「は?」
去っていく女子。笠井はそのままフリーズ。誰か解凍してあげて。
彼は思う。どうしてだろう、ぶつかった女子生徒の後ろ姿に、三上の姿が被ったのは。



***



が見上げれば小さな雲が一つ浮かぶ青い青い空。区切られたフェンスの向こう。
見慣れた、だけど久しぶりな背中を見つつ、は微笑んだ。
きっと四時限目からサボっていたんだ。そうに決まっている。と・・・。


が訪れたのは女子棟側の屋上。といっても位置的には本棟の屋上。
再度補足として説明しよう。

武蔵森は屋上までもが男子女子フェンスで分けられている。
領域としては本棟の真ん中を2枚フェンスが区切りフェンスの間は40cm程、
女子棟側と男子棟側、それぞれ屋上が繋がっている。
だからカップルはよくこのフェンスを挟んで食事をするらしい。と言っても滅多なことではいないけど。
大抵ここはサッカー部がつるんでいて、それを見ようとする女子生徒とそれを規制するファンクラブが取り仕切っている。

ぶっちゃけて本音を言えば、サッカー部は女子皆の物!!
的な勘違いも甚だしい思考で彼等のお昼の邪魔はするな。
とお互いがお互い睨み合ってるだけの話。

なので、女子棟から屋上に出るものは少なく(まったく居ないというわけじゃない)、
男子棟ではサッカー部が幅を利かせている。とそんなわけだ。

ちなみに、この屋上に出るには本棟からではなく、各棟の一番本棟側の階段を登れば着いちゃうのです。
本棟から屋上には出れません。


ともかくはその姿を見て一人思った。この区切られたフェンスがどうしようもなく邪魔だ、と。
内緒だけど。もしなかったら大好きな兄の背中にダイブして抱きつくのに。
三上、兄が兄なら妹も盛大なブラコンでした。


「っ、えーーい!!!」
「っ、わぁあああ!!!」
は手に持っていたピンポン玉を勢いよく三上に向かって投げつける。
そのピンポンだまはフェンスを越えてぴったりと三上の下へ。

「アハハハハ、イエーイ、ぴったり。ナイスコントロール。」
「何・・・?」
「やっほー、亮〜。サボりとは関心しないよ馬鹿兄。」
自分の存在に気付いたのが嬉しくては盛大に両手を振る。
三上も三上で呆れたように、だけど内心かなり嬉しそうに振り替えす。
勿論小言は忘れない。

「着てたんなら着てたで連絡しろっての!!心配させんな馬鹿。」
「心配してくれたんだ〜。アキ兄優しい。さっき担任に挨拶して5時限目から登校です。その前にアキ兄に会いたくて探したんだよ〜。」
「そうか、大丈夫そうか?」
「大丈夫、私を誰だと思ってるのかなぁ。三上だよ?」
「ヘイヘイ。」
それで納得するのはどうかと思いますよ、三上さん。
「制服ど?」とスカートを軽くつまみながらは笑う。それに「似合ってんじゃね?」とそっけなく返す。いつものことだ。


「三上せんぱーいって、あ、お邪魔でしたか?」
男子棟側の扉が勢いよく開かれる。
それに三上と2人して目を向けると両手にパンを抱えた藤代の姿。
その後ろには笠井の姿。笠井の姿を見てが嬉しそうに笑うのが見える。三上には見えてないけど。
二人はフェンスの向こうに見える女子生徒の姿を見て、邪魔だったかと素直に聞く。
教育がなってるね、三上さん。
勘違いも勘違いだが、は少し年上に見られるのだ。
実年齢は12歳でも今のところ三上と年上かそれより少し上か。・・・もちろん黙っていればの話だが。

「おや、犬君だ。昨日ぶり。それにさっきぶり、猫目の笠井君。」
ひらひらと手をふりながら太陽のようににっぱりと笑うに藤代と笠井は動きが止まる。



「え・・・・・・・・・・・・・・・・・誰?」
「あ、さっきの・・・」
「さっき?何があったんだ?」
「職員室で頭をごつん。結構痛い。猫目の笠井君意外と石頭。」
額をさすりながらが苦笑いする。それに呆れたような表情で三上が溜息をついた。
我が妹ながら、どうせ前方不注意でぶつかったんだろうと三上は思う。
どうして分かるんだよ三上。

「さっきは、すいませんでした。」
「なんのなんの。」
礼儀正しく返してきた笠井を見て、が「アキ兄も良い後輩君持ったね。」と呟く。
その発言に反論しようとした三上を、遮ったのがその後輩君2人だった。


「「アキ兄??」」


自分達が知ってる限り、その呼び方をしていたのは昨日会った三上のみ。と2人は判断する。
そしてをよく見る。三上と似てない無邪気さ、切れ長の目。女子の制服。
でも声は、昨日も聞いた・・・・・・つまり?

「三上先輩、まだ妹さんいたんですか?」
「弟だけだと思ってたんですけど?」
「んなわけねーだろ。だよ、こいつ。」
「「・・・・・え・・・」」
「ハロ〜。」
「・・・君?」
「うん。」



「・・・・・・女の子だったの?」



「正解〜。なんも出ないけどね。れっきとした亮の妹だよ。」
「お前等勘違いしてただろ。と親父に遊ばれてたんだよ。」
さすが三上亮。あの妹にしてあのパパさんを持つ、三上家の苦労人。
しっかりと家族の性格熟知してますね。(ほっとけ・・・by三上)
自分の父親が自分で遊んでいるのは分かってる三上亮。
だけど父親はどうでも良いとして自分の妹だけは無下に扱えないヘタレ君、三上亮。学習能力は高い。

「「嘘・・・」」
「えへへへへ。宜しくね、犬君、猫目の笠井君。」



***



、お前マネージャーやれ。」
「・・・はい?」
誤解も解けた屋上で、渋沢の到来にもう一度説明することになった三上を尻目に
は自分の弁当を箸でつまみながら食べていた。
フェンスを背にしながらも起用に会話している1年ズ。
騙されていたことも何のその仲良く慣れたのは単に犬君のおかげなのか・・・。
会話はサッカーのことばかりで弾む弾む。
笠井すらも自分達と同じくらいサッカー馬鹿さ加減に、遊ばれていたことはどうでも良くなってきたらしい。
そこに投下されたのは三上のそんな言葉だった。

「マネージャーって、サッカー部の?」
「ああ。お前のことだ、下手な部活に勧誘される前にしとく。来い。」
「どー言う意味っすか?」
「こいつ、部活選ぶの面倒だからつって一番最初に勧誘してきたとこに入るだろうからな。」
「うん。」

「だって本当に面倒だし。」とが頷く。はサッカーが好きだ。
だけど武蔵森に女子サッカー部はない。ならどこに入っても大して変わらない。と言う。
いいのか、ちゃん・・・。(良いの良いの。by


「でも女子は男子のほういけないんだって聞いたけど?」
「サッカー部のマネージャーは特別なんだよ。関係者ってことで。」
「そうだな、俺も三上の案には賛成だな。」
、お前サッカー好きだろ?」
「好きだよー。」
何を今更と物語る表情では即答する。
その様子に微笑ましいとばかりに渋沢が傍観を決め込んだ。日和に茶を飲む爺みたいなのは誰も突っ込まない。
そして最初から傍観しているのは藤代と笠井。
内心では「やってくれたら嬉しいかも」ぐらい思っているかもしれない。
三上が怖くていえないけど(シスコンなのは嫌と言うほど分かったから)。
それらしいそぶりを見せようモンなら・・・と藤代が怯えている。(笠井は?)


「でもなーー。」
「どうした?」
「サポートが嫌いってわけじゃないけど、見てるよりやりたい。」
「終わったら相手してやる。」
「勿論後ろの3人も」と言う言葉に驚くのは藤代と笠井の二人。なんで渋沢さん驚かないの?
三上亮、妹のためなら他人すらも利用する。おそろしや・・・


「それじゃ帰るの遅くなる。パパ一人じゃ自炊できないの知ってて言ってる?」
「・・・なら週一で相手してやる。その日は泊まってけ。一日くらいなら大丈夫だろ、親父の奴。」
「うーん、捨てがたいけど、でもなぁ〜。」
別に自身、兄が相手してくれるのは嬉しいし、藤代や笠井、渋沢が相手してくれるのも嬉しいと思っている。
(たとえそれが三上の強制だとしても)だけど父を一人にしないためには自宅通学の許可を取ったのだ。
それに泊まれといっているのは松葉寮。サッカー部寮。住んでる人はサッカー部員=男だけ。
女子が泊まれる部屋はあるんですか?
泊まることにはなんの問題もないらしい。(それはどうかと思うよちゃん)



「三上先輩必死ですねー。」
「猫可愛がりですか?」
「分からなくもないけどな。」
「頼むから目の届くところにいろ。」
「居たいけど〜・・・」
居たいんだ・・・。3人が思ったことは同じ様なことだった。

「(仕方ねぇ)笠井!!」
「え、俺?」
「頼め。」
「は?」
「亮〜?猫目の笠井君に迷惑掛けちゃ駄目だよ。」
「良いから頼め。」
いきなり話の中心に連れてこられたのは笠井。
頼めって、あれか?マネージャーになってくれ。と?シスコン具合も重症なんだな。しかしなんで自分?見た限りさんもかなりブラコンっぽいから三上先輩が懇願すればOKだすんじゃなのか?俺なんかが頼んでOK出すとは思えないんだけど?頭大丈夫?この垂れ目の俺様。
ここまでコンマ0.1秒。悪態を吐くのは忘れない笠井。君あれだろ絶対腹黒だろ。


さん、お願いできますか?」
「猫目の笠井君から頼まれたら断れないよ〜。」
「「「は?」」」
今まで渋っていたのが嘘のようにあっさりとOkを出したに三上以外間抜けな声が出た。

「こいつ大の猫好き。だからお前のことかなり気に入ってるっぽい。」
「それ喜んで良いんですか?」
笠井君、今回ばかりは喜んではいかが?(・・・・・・by笠井)
悩んでるところを見るとまんざらでもないご様子。
子猫の正体は単なる猫好き。多分、それで決まりではないでしょうか?

 

 

「日本の制服って堅っ苦しいよね?」
「向こうは私服だったんだっけ?」
「うん、専らジャージ系だったけど。」
「なんで?」
「学校終わって直ぐにサッカーやってたから。」

(08.09.14)