タ ブ レ ッ ト
- 契 約 者 -

 

 

 

数多くの電話機が置かれた、薄暗い部屋。
その中央に陣を取るように、無駄に器用なその手で、マフラーでも編んでいるのだろう。
「なぁ、伯爵。」


千年伯爵と呼ばれるその妙なキグルミでも来たような男。
クローキングチェアに腰掛けつつ、手から作り出されるその長い物は、既に数mを越えていたりする。



「なんですカ、ラビ。」
ギシリと木製の椅子に反対に腰掛つつ、俺はその工程をただ記録していた。
「・・・アンタは、どんなエクソシストが居るか把握できてんだよな?」
「今度はエクソシストですカ?」

レロと呼ばれる傘が一生懸命に出来上がっていくマフラーを畳んでいく。
小さい体に口だけで、よくやるよと呆れつつも手伝わないのがいつもの俺だ。
「アレン、・・・アレン・ウォーカーってエクソシスト知ってるさ?」
ピクリと、伯爵の動きが止まる。
嗚呼、地雷でも踏んでしまっただろうか?

「何処で、その名を?」
「この間、散歩してたら、そいつに助けられた。」
AKUMAから。と告げれば、伯爵は程なくしてその手を進め始める。


「また我輩のAKUMAを壊そうとしたんですカ?ラビ。」
「だって、・・・ちょっとイラついてたんさ。」
「貴方のせいで、我輩のAKUMAが減っていきマス。」
「どうせそれ以上に増やしてるくせに。」



「そういう問題ではないのですヨ。」
「ハイハイ、ごめん。悪かったさ。だから伯爵、俺のこと嫌いにならないでよ。」
クスクス笑う俺と、反省してないでショ。と言う伯爵の声が被る。
「アレン・ウォーカーでしたネ。」
「そう。知ってる?」

「我輩は2度会ってます。」
「伯爵に、2度も?1回はあいつがAKUMAを作った時だろ?」
「それも知ってるんデスカ。」
「あいつから聞き出した。」
俺の話術はそれなりに定評がある。
なるほど、と納得したように伯爵は話を進めた。


「父親をAKUMAにしたんデス。その時に、呪いを受けたんでショウ。あのガキはAKUMAの魂が見えるそうですよ。」
「そういってたさね。父親か・・・なるほど。」
「2度目は、我輩が、邪魔なガキを殺そうとした時です。あの時は、アレン・ウォーカーがその時のガキとは分かりませんでした。」


「・・・髪?あれ、変だよな?」
「頭が良いデスね、ラビ。恐らく、父親のAKUMAを壊した時でしょう。我輩の記憶にあったガキは栗色の髪でしたから。」
「てことは、ショックで色素が死んだんか。・・・ん?どうしてあいつ生きてんだ?イノセンス?」
「生まれながらにしてイノセンスに寄生された人間デス。我輩も初めて知りました。」


「殺される前にイノセンスが宿主を守ったんか。そりゃ珍しいな。寄生型って言えば、希少種じゃん。」
自分の持つ、イノセンスは装備型。
そもそも、イノセンスが生まれながらにして宿っている人間など初めて聞く。
数奇な運命。そしてAKUMAを見分ける眼。

(エクソシストになるべくして生まれたって感じだな。)
人を疑うことを知らないあの目は、恐らくその父親のAKUMAに植え付けられたのだろう。
あの眼を持っていれば、人を疑わずにAKUMAだけを狙える。



「で、伯爵はあいつが気に入らないんデショ?」
「全くデス。しかもあのクロスの弟子と来てる。」
「・・・クロスって、クロス・マリアン?あの?破天荒な?」
嘘っだー。
クロス・マリアンといえば、俺らの中でも有名なエクソシストだ。
伯爵も相当気に掛けているくらいだ。


「よーす、千年公、ラビ。」
「あ、ティキポン。」
「遅かったですね、ティキポン。」
「それ止めてください。二人とも。」
「面白れぇのに。」
「面白いデスのに。」

「・・・・・・で、千年公。俺を呼んだ理由は?」
「つまんねぇ、」
「ラビ!!」
「ヘイヘイ。レロ、ロードと遊んで来ようぜ。」
「待ってくださいレロ、ラビタマ!!」

ガタリと椅子から立ち上がり、伯爵の編んでいたマフラーを畳んでいたレロを掴みその部屋を出ようとする。
「ラビまで、レロをちょろまかさないでクダサイ。」
「ちょろまかすのはロード。俺は攫ってくんさ。」
「「どっちも駄目デショ。」」
「・・・んーー・・・伯爵v貸して?」
全身全霊を持ってニッコリと笑顔を振りまけば、敵いませんと伯爵は溜息をついた。
「んで、千年公、やって欲しいことって?」
「リストに乗ってる人物をデリートして欲しいのデス。」
「うっわ、多っ!!」
「あ、ホント多い。」
ひょっこりと、ティキの陰から覗き込む。
リスト書かれた人物の多さに、一瞬眼を見張る。
けれども普段本を読むことで鍛えささっている脳は瞬時に、その名前を見つけた。



「・・・アレン・ウォーカー。」






「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・伯爵〜vv・・・」



「なんデスカ、ラビ?」
その超絶スマイルは。




俺の笑顔を気にしているのか、それともその前の思考の時間を気にしているのか、


「このアレン・ウォーカー、俺に頂戴。」
「「・・・・・・は?」」
「何さ?」
ティキと伯爵が一瞬理解できない、と眼を見張る。
「ラビ、貴方頭撃ちました?」
「は、どういう意味さ。」
「お前が人気にかけるなんて珍しいっつってんだよ。」
「あー・・・うん。俺もそう思う。」

「「病気?風邪?頭部破壊?複雑骨折デスカ????」」
「おい!!」
なんだその言い草は。
確かに自分は人を、しかも人間を守る側であるエクソシストを気に掛けるだなんて、珍しいことをしたと思っている。

「違ぇよ。俺の玩具に頂戴っつってんの。」
「・・・玩具?ロードかお前は。」
「どうでも良いさ。こいつは俺に殺させて。」
「けどよー、俺にはなんとも。」
「駄目さ?伯爵?」

「・・・・・・まぁ良いでショウ。貴方が何考えてるのか分かりませんけど。」
「やった、サンキュー伯爵。セル・ロロン。アレンは俺のさ。」
『了ぉ解で〜す。』
カード裏の囚人がアレンの名前を消して行く。
それを嬉しそうに眺めながら、自分でもありえないことをしていると思う。



「ティキポン。当分の間、ラビの世話お願いしますネ。」
「げ・・・・・・」
「何さ、その『げ』っての。伯爵。俺別に一人でもいいんだけど?」
「駄目ですネ。」
「・・・過保護で嫌われるさね、ロードに。」
「そうなったときは、如何にかシマス。」
「俺はお前のお目付け役ってことだ、千年公もお前にAKUMA壊されるのを控えさせたいんだろ。」
「だって、人間殺したいけどさ、後の始末大変なんさ。その点AKUMAは楽さ。」
外見は人間と変わらないし、気分を紛らわせるだけならAKUMAで十分。



「ほれ、ラビ行くぞ。」
「へーい。」
「ティーズは好きに持っていって良いですからネ。」
だからレロは返しなさい。と伯爵が呆れつつ、俺の手に持つレロをビシリと指差す。
と言っても扉に向かおうとして体を回転させた後だから、伯爵から見れば背中からだが。


「バレタか。」
「ラビ・・・。」
「分かってるさ。悪ぃなレロ。ロードの相手頑張れ!!」
「そんな、酷いレロ、ラビタマ〜。レロも連れてってくださいレロ」
「千年公。レロの奴が泣き言言ってるぞ?」
そんなにロードの相手は嫌か?
傘の癖して涙を流している傘をかわいそうに思いつつ、それでも非情伯爵に傘を返す。


「レロ〜〜〜!!! ラビタマ〜。」
「耐えろ、レロ。」
「お前も相変わらず非情な・・。」
「今更さね。さぁて、荷物でも詰めてくっかな。」
「マジでお前と行くのかよ・・・。」
「ロードとの方が良かったさ?」
「どっちも嫌だな。」

「ひでぇな、俺とティキの絆はそんなに脆いんさ?」
「お前がクラッシャーじゃなけりゃ、喜んで一緒に行かさせてもらっただろうよ。」
「はは、まぁ、どうにかなんしょ。」
「マジ勘弁しろよ。」

 

(09.3.29)